日本の夏といえば、お祭りの音が聞こえてくる季節
笛の音に合わせて鳴り響く太鼓のリズムは、地域ごとの特色がにじむ「音の風景」でもあります
実はその音を生み出している「バチ(撥)」も、地域や演奏スタイルによって意外と違いがあるんです
今回は、そんな「地域ごとに異なるバチの特徴」に注目してみましょう
太鼓の音を決めるのは、バチの個性
バチは「ただの棒」ではありません
太さ・長さ・材質・重さ――どれかひとつが違うだけでも、音や打ち心地はガラリと変わります
たとえば、「ドン」という深く重い音を出したい場合は、太めで重さのあるバチが選ばれますし、テンポの速い曲には、軽くて細めのバチが好まれます
こうした「音の好み」と「演奏スタイル」が、各地の祭りにあわせてバチを進化させてきたのです
地域によってこんなに違う!
たとえば――
● 青森ねぶた祭(東北)
→ 大きめの長胴太鼓に、重さのある太めのバチを使用
音に力強さと重厚感が求められるため、材質もしっかりとしたものが選ばれます
● 三社祭・神田祭(東京)
→ 小回りのきく細身のバチが主流
テンポの速い囃子にあわせて軽快に叩くため、取り回しやすさが重視されます
● 阿波踊り(徳島)
→ 団扇太鼓や桶太鼓にあわせた細くて軽い竹バチ
撥のしなりを活かしてリズミカルに跳ねるような音が特徴です
● 沖縄エイサー太鼓
→ バチではなく「ティーガー」と呼ばれる握り布+細いスティック状のバチ
動きのダイナミックさを活かすため、演舞と一体化したデザインになっています。
バチもまた、地域の文化財
同じ「太鼓」でも、演奏される環境・リズム・踊りに応じて、バチもまた土地に根ざした形へと育ってきたというわけです
音の個性は、地域の暮らしや風土ともつながっているのかもしれません
私たち川合木工所でも、地域や団体によって「長さはあと5cmだけ短く」「ほんの少し軽く」といったご相談をいただくことがよくあります
そのリクエストの奥には、その土地の音を守りたい、届けたいという想いがあるように感じています
まとめ
もし地元のお祭りで太鼓の音が聞こえてきたら、こんな風に思ってみてください
「この音は、どんなバチから生まれているんだろう?」。
そのバチには、地域の音、歴史、想いが詰まっているかもしれません
そしていつか、あなたの手で叩く太鼓にも、ぴったりの一本を見つけていただけたら嬉しいです
